あれ?そういう選手なんだっけ?
横浜F・マリノスに移籍した大津祐樹に何度もそう思ったことがあった。
Jリーグでマリノス一筋、あまり他チームの選手のことに興味を持つ余裕はないせいか、結構他チームの選手について勝手な印象を決めつけて見ていることが多々あるのは小生の悪いところではある。
柏レイソル(&ドイツブンデスリーガ)や日本代表の試合で時折目にした大津祐樹は、サッカーは確かに上手いが、茶髪でチャラい兄ちゃんという印象だった。
昭和生まれで厳しい父親に育てられた小生にとってはちょっと受け入れにくいタイプ。(実は他チームで他にもそういう印象で好きになれない選手が何人かいる。)
ましてドイツから帰って以降、怪我で離脱を繰り返していた認識で、デビュー当時の鮮烈な輝きはどこか失われはじめているという印象を勝手に持っていたので、そんな大津祐樹がマリノスに来ると聞いたとき、正直心から期待したわけではなかった。
ただ、その大津祐樹を獲得に動いたのがオグさんだいう噂を聞いたとき、少し気持ちが動いた。
オグさんが獲りにいったというならば、相応の気概を持った選手で、もしかすると小生が思っているほどチャラい兄ちゃんではないのかもしれない。
移籍一年目のファーストハーフに見た彼のプレーにおよそ小生の想定を超えるものはなったが、どこかで大津が吹っ切れたタイミングがあり、明らかにプレースタイルが変わった。
ピッチに出ると全身を使い全霊で闘う姿勢。
そのペースじゃ持たないぞ、と心配になるほど、ピッチを駆け巡り、前から相手のボールを奪おうという姿勢が開花し、それがマリノスの大津祐樹のプレースタイルとして定着していった。
優勝した2019年、マリノスにリードされた相手チームが、前からボールを本気で奪いにプレスをかけられるとそりゃもう、大津が嫌な存在であったことに違いはなかっただろう。
加えて、パスの精度、周りを使うテクニックにも磨きがかかり、出場時間は決して長くはないけれど、プレーでチームを鼓舞する貴重な存在となった。
2019年J1リーグ、アウェイ清水に敗れた次節の第16節ホーム松本戦、1点が遠い雨の試合で相手DFに競り勝ち残した大津のビッグアシストが心に焼き付いている。
大津のアシストで奪った1点で勝ち切った試合の円陣でゴールを決めたエジガルの「今日はユウキだろ!」という一言は、この試合を見ていたすべての人の気持ちを代弁したものだ。
真っ黒に汚れたユニフォーム姿で笑う「マリノスの大津」でなくては生まれなかったビッグアシスト。
気が付いたときには、小生の中で大津祐樹のイメージは、チャラい兄ちゃんから、選手たちのメンタル的にも、サポーターのメンタル的にも支柱となるマリノスの兄さんに変わっていた。
大津祐樹がマリノスの選手やサポーターに与えた影響力は数字で語るよりはるかに大きく、それだけでもクラブにとって大きな戦力で、マリノスを去ることはとても寂しい。
今年も大津のような役割は必要でこの大役をだれかが引き継いでほしい。
考えてみれば、大津が加入したのは、マリノスの選手が一丸とならねばならないまさにその時だった。
もしかするとオグさんは、この大役を大津に期待して獲得したのかもしれない。とふと思った。
旅立つ大津には磐田で星をつかんで欲しい。
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